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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)2182号 判決

昭和四八年(ネ)第二一八二号事件控訴人、

昭和四九年(ネ)第一六三六号事件

被参加人

小林春一

右訴訟代理人

高野三次郎

昭和四八年(ネ)第二一八二号事件被控訴人、

昭和四九年(ネ)第一六三六号事件

被参加人

上石拾吉

右訴訟代理人

大野金一

昭和四九年(ネ)第一六三六号事件当事者

参加人

日野自動車工業株式会社

右代表者

荒川政司

右訴訟代理人

岡田喜義

主文

一、(昭和四八年(ネ)第二一八二号事件)

(一)  原判決中、被控訴人の請求を認容した部分を取消す。

(二)  被控訴人の請求を棄却する。

(三)  その余の控訴を棄却する。

二、(昭和四九年(ネ)第一六三六号事件)

(一)  当事者参加人と被参加人上石拾吉の間において、別紙物件目録記載の一の各土地についての、東京法務局福生出張所昭和参拾四年九月四日受付第参七六九号所有権移転仮登記(同法務局同出張所昭和参拾五年拾壱月四日受付第六六八六号及び昭和参拾七年壱月参拾壱日受付第四六七号各権利移転附記登記)に基づく所有権移転の本登記手続の請求権が当事者参加人にあることを確認する。

(二)  被参加人小林春一は、当事者参加人に対し、前項記載の各土地につき、前項記載の所有権移転仮登記に基づく所有権移転の本登記手続をせよ。

(三)  当事者参加人のその余の請求を棄却する。

三、控訴人と被控訴人との間の本訴及び反訴に関する訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを二分し、右各当事者において各その一を負担するものとし、当事者参加人と被参加人等との間の当事者参加による訴訟費用は、被参加人等の負担とする。

事実《省略》

理由

(以下控訴人兼被参加人小林春一を控訴人と、被控訴人兼被参加人上石捨吉を被控訴人という。)

一別紙物件目録記載の一の各土地(従前の土地)がもと控訴人の所有であつたことは当事者間に争いのないところであり、〈証拠〉によれば、控訴人の娘婿である訴外大野史郎は、訴外村野圭に前記従前の土地の売却の斡旋を依頼し、右村野圭は控訴人に面会して売却の意思を確認したうえ、被控訴人に右土地の売買の斡旋をなし、昭和四三年九月三日控訴人(代理人大野史郎)と被控訴人との間において、控訴人は被控訴人に対し、右従前の土地(当時農地)を、農地法第五条第一項本文の規定による東京都知事の許可を条件とし、代金一〇〇万円で売渡す旨の契約が成立し、被控訴人はその頃右代金を完済し、同年同月四日東京法務局福生出張所受付第三七六九号をもつて所有権移転仮登記を経由したこと、次いで被控訴人は、昭和三五年一〇月三一日訴外小作達郎に対し右仮登記にかかる権利を譲渡し、同年一一月四日同法務局同出張所受付第六六八六号をもつて右仮登記につき権利移転の附記登記を経由し、更に右小作達郎は、昭和三七年一月二二日当事者参加人に対し右仮登記にかかる権利を譲渡し、同年同月三一日同法務局同出張所受付第四六七号をもつて右仮登記につき権利移転の附記登記を経由し、右小作達郎及び当事者参加人はいずれも当時譲渡代金を完済したこと、以上の事実が認められる。(右所有権移転仮登記及び各附記登記がなされた事実は、当事者間に争いがない。)〈証拠判断省略〉

二而して、その後昭和三六年一一月九日前記従前の土地は都市計画により工業地域に決定され、次いで福生都市計画羽村富士見平土地区画整理事業の施行に伴い、昭和四四年一一月一日別紙物件目録記載の二の土地が従前の土地の仮換地として指定され、更に昭和四五年一二月二六日付東京都告示をもつて右従前の土地及び仮換地が都市計画法第七条第一項の規定による市街化区域となり、遅くともその頃には宅地化したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

而して、右の通り従前の土地及び仮換地が都市計画法の規定による市街化区域となり、更に適法に宅地化した以上、右土地の権利の移転につき現況主義の建前を採る農地法は適用されないものというべきであるから、前記従前の土地の買売契約の条件(法定条件)である農地法第五条第一項本文の規定による東京都知事の許可は不要となつたのみならず、右土地は市街化区域にある農地又は採草放牧地にも該当しないから、同法第五条第一項第三号の規定による東京都知事への届出も要しないものと解するのが相当であつて、当事者参加人は、従前の土地が宅地化したことにより、東京都知事の許可も、同知事への届出もまたず、右土地の所有権を取得したものというべきである。

また、前記認定の通り、控訴人と被控訴人との売買契約に基づき従前の土地につき所有権移転仮登記(不動産登記法第二条第二号)がなされ、次いで右仮登記にかかる権利が被控訴人より小作達郎を経て当事者参加人に譲渡され、各権利移転の附記登記がなされた後、右土地の所有権が当事者参加人に帰属したのであるから、かような場合には、仮登記に基づく所有権移転本登記手続の請求権は、現在の登記名義人たる当事者参加人にあると解するのが、仮登記と附記登記が一体となつて現在の仮登記権利者を表示している登記手続の上からも、また当事者参加人名義に附記登記がなされた後所有権移転の効果が生じたという権利変動の実態からみても相当であつて、もとの仮登記名義人である被控訴人に本登記の請求権があると解するのは相当ではない。《以下省略》

(平賀健太 安達昌彦 後藤文彦)

(別紙) 物件目録《省略》

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